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「歌には腹式呼吸」と歌を歌っている人なら誰でも聞いたことがあると思います。しかし実際「腹式呼吸ってどういう呼吸ですか?」と聞くと、「お腹から声を出すってことですか?」とか「お腹で息を吸う」とか曖昧な答えが返ってきます。実際、自分の身体の中で起こっている事をイメージするのはすごく大事なことで、ここがこう動くとこういうことが起こるということが頭でわかることによって、身に付くことも早くなります。簡単にいうと腹式呼吸とは「息を吸うとお腹が膨らむ呼吸」で、それに対する「胸式呼吸」は「息を吸うと胸が膨らむ呼吸」です。では、それぞれの仕組みを説明します。
 
胸式呼吸
 
肋骨の間には肋間筋(ろっかんきん)という筋肉があります。(図3.)肋間筋は肋骨の間を開いたり閉じたりする筋肉です。胸式呼吸は肋骨を開く事によって、胸郭にスペースを作り、肺に空気を送り込みます。肺は自分一人では動くことはできないので、胸郭の周りの筋肉を使って空気を入れているのです。スポーツのように素早い酸素吸収を必要とする場合には有効な呼吸であるといえますが、一定の空気を声帯に供給する場合はどうでしょう。肋間筋は吸い込む時には力をコントロールできますが、吐く力を上手くコントロールできないのです。風船に例えるとよくわかると思いますが、膨らんだ風船の口元を手で離すと一気に空気が飛びだすイメージです。この吐く力をコントロールするということが歌を歌うことにすごく大事なことなのです。それと息を吸った後息を止めますが止め方もそれぞれ違います。胸式呼吸で息を止めると重い物を持ったときに喉が「うっ」とつまった感じや、トイレで力んだ時の感じに似ています。つまりこれ以上吸えずにどっと吐くような感覚です。
 
腹式呼吸
 
肺の下には呼吸器官と消化器官を分けている「横隔膜」(図4.)という筋肉がついています。膜状になっていて、ドーム型をしています。寝ている時とかリラックスしている時にはこの横隔膜が収縮して平らに近くなり、肺のスペースを作ります。肺が下の方に広がった結果息を吸い込みます。そして横隔膜の下にあった内臓を押し下げるので、つぶれた内臓でお腹がふくれるのです。これが腹式呼吸の仕組みです。腹式呼吸は吐く力が強く働き、意識的にも吐く力をコントロールできます。そしてもう一つ大事なのは横隔膜が下がる条件として、腹筋がリラックスしていることをあげますが、腹筋と喉は互いに連動しているのです。
先ほどの項目で述べたように、重い物を持ったときに喉が詰まった感じになり、腹筋にも力が入るのがわかると思います。腹式呼吸は、注射器のピストンをひくと空気が入り押すと空気が出ていくイメージです。その際には空気の出口やピストンの周りも力が加わってはいません。息の止め方も胸式呼吸と違い、もう少し吸えるような感覚、吸気的な息の止め方です。シャッターを切る時の喉の感覚をイメージするとわかると思います。喉が開き、腹筋もリラックスした状態を保ち、横隔膜が縮む力と息が入っている肺の圧力を利用しながら吐く力をコントロールできるので歌には最適と言うわけです。
 
 
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